第97回 海外交通政策資料研究会

第97回 海外交通政策資料研究会
2025年6月26日(木)14:00

【議題及び資料】

  1. アジア地域別鉄道プロジェクト情報
  2. Siemens consortium to equip India’s first high-speed rail with advanced signalling & telecom
  3. The devil is in the detail of UK rail reform
  4. Eurostar plans direct trains to Frankfurt and Geneva
  5. Government sets out plans to sort out ‘appalling mess’ at High Speed 2
  6. フランス鉄道近況
  7. Broken wheel disc caused Gotthard derailment

【議事概要】

  1. インド:DRA-Siemens JVがムンバイ~アーメダバード間の高速鉄道にかかる信号契約S1を獲得。バングラデッシュ:ダッカの深刻な交通渋滞に対応するため、道路、鉄道、地下鉄網を統合したシステムが提案され、2045年までに590億ドルの投資が必要とされている。ミャンマー:ヤンゴン郊外の工業団地に隣接する港湾を運営していた日本の大手商社などが事業から撤退。4年前に起きた軍クーデター以降、混乱が続き事業環境が悪化。ベトナム:地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)系のビンスピード(VinSpeed)が南北高速鉄道プロジェクトへの投資を申請。マレーシア:運輸相が、クアラルンプール~バンコク間の直通列車サービスを今年中に復活させる意向を表明。シンガポール:センカン・プンゴルLRTネットワーク用の最初の2編成が、製造元の三菱重工業からSBSトランジットに正式に引き渡し。インドネシア:ジャカルタ-PT Kereta Api Indonesia(Persero)は、鉄道のデジタル変革強化のためドイツ鉄道(DB)と覚書(MoU)に署名。フィリピン:マニラ地下鉄7号線のコンセッション事業者である SMC MRT-7 Corp は、マニラ地下鉄7号線の運行・保守に関して韓国Korailと10年間の契約を締結した。また、JICAがマニラのライトレールシステム近代化を支援。韓国:国土インフラ交通省(Molit)が、水素(燃料電池)旅客列車を迅速に市場投入するための研究開発プロジェクトを開始。中国:中国~キルギスタン~ウズベキスタン鉄道の3トンネルが一斉に着工。また、中国とモンゴルを結ぶ鉄道(2027年開通予定)の起工式も挙行。
  2. シーメンス・コンソーシアムは、インド初の高速鉄道プロジェクトに先進信号・通信技術を提供する契約をNHSRCL(国立高速鉄道公社)と締結。ETCS(欧州列車制御システム)レベル2ベースの信号・列車制御技術の設計、設置、保守を担う。プロジェクトは54カ月の期間で実施され、シーメンスは15年間の保守サービスを提供する。
  3. 英国政府がグレート・ブリティッシュ・レイルウェイズ(GBR)を創設する新法を公布。GBRは上下一体で鉄道線路と旅客列車のほとんどを管理する。ただし旅客列車の約3分の1は地方自治体や民間企業など他の団体が引き続き運行し、貨物列車も民間運営のままとなる。道路・鉄道庁(ORR)は引き続き規制機関として、GBR以外の企業に免許を付与する。線路使用に関してはORRではなくGBRが担当するため、GBRが自社列車を優遇するのではないかと危惧する声もある。また、地域列車と長距離列車、貨物列車をどう調整するかも課題である。
  4. ユーロスターが、ロンドンからドイツおよびスイスへの直通列車サービスを開始する計画を発表。総額約20億ユーロ(約2,700億円)を投じ、最大50編成の新車両を導入し、2030年代初頭までに運行を開始する予定。ロンドン~フランクフルト間の所要時間は約5時間、ジュネーブまでは約5時間20分となる見込みだが、途中の停車駅については明らかにされていない。実現には、ロンドン東部の車両基地に増発分の列車を収容できる十分なスペースを確保する必要がある。
  5. 英国の運輸大臣は、HS2(High Speed Two)について、「一連の失敗」がコストの急騰、監督の不備、約束の破棄につながったと述べ、その「ひどい混乱」を解決する計画を発表。合理的な最低コストで、たとえ時間がかかっても仕事を完遂するとした。あわせて、HS2の後期フェーズは、資金が確保できないため中止されるだろうと述べた。
  6. フランスでは、格安チケットの販売により旅客増となる可能性があるが、列車系統は複雑である。駅ナカビジネス拡大でかつての切符売場は売店に変貌するもレストランはほとんどない。RATPは紙製の切符や回数券を廃止し、すべてICカードのNavigo Easyまたはスマホでの対応とした。道路はパリ市内ほぼ全域で30km/h、環状道路は50km/hに規制(従来80km/h)。1~4区は居住者や配送等以外の自動車の通り抜けを禁止している。パーキングメーターは15分間3ユーロ(8区の例、約500円)、ガソリン価格は1リットル1.8ユーロ(約300円)前後の価格水準である。
  7. ゴッタルドベーストンネルで2023年に発生した貨物列車の脱線事故について、スイス運輸安全調査委員会(SUST)が報告書を公表した。これによると、この事故は車輪の破損が原因で発生し、列車は約7km走行を続け、ファイド駅の分岐器を破壊した。これにより、世界最長の鉄道トンネルが約13カ月間閉鎖された。LLブレーキブロックによる車輪への熱負荷は応力や亀裂を引き起こす可能性があり、最悪の場合、壊滅的な結果をもたらす車輪破損を引き起こすことから、スイス連邦鉄道(SBB)は、欧州鉄道機関(ERA)とスイス連邦運輸局(FOT)に対して迅速な対応を求めている。

【出席者】
岩沙克次 岩橋洋一 遠藤俊太郎 川﨑孝夫 
佐々木敏明 佐藤芳彦 菅建彦 高津俊司 西江勇二 東充男 前田喜代治

コメントは受け付けていません。